川畠成道(かわばたなりみち)チャリティコンサート 2017パンフレット
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日本ユニシス・プレゼンツ
川畠成道(かわばたなりみち)チャリティコンサート2017
- 2017年8月3日(木)豊洲シビックセンター5階ホール 19:00 開演(18:30 開場)
- 出演:
川畠成道(ヴァイオリン)
佐藤勝重(ピアノ)
※やむを得ない事情により、出演者、曲目が変更になる場合がございますので、予めご了承ください。
〈主催〉日本ユニシス株式会社
〈協力〉公益財団法人 江東区文化コミュニティ財団 江東区豊洲文化センター
川畠成道音楽事務所
目の不自由な方の社会参加を支援する団体への寄付をお願いします。
- 公益財団法人 日本盲導犬協会 https://www.moudouken.net/
- 特定非営利活動法人 視覚障害者パソコンアシストネットワーク(SPAN)
http://span.jp/
プログラム
前 半 |
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休 憩 | 15分 |
後 半 |
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曲目解説にかえて
~川畠成道 みずからの言葉で~
ヴァイオリン・ソナタ 第2番 イ長調 Op.100
Violin Sonata No.2 in A Major Op.100
J.ブラームス Johannes Brahms(1833-1897)
「継続は力」ブラームスの作品に触れるたび、私はこの言葉を思う。1853年春、ハンガリー出身のヴァイオリニストレメーニとの演奏旅行、それに続くシューマンとの出会いから始まった彼の音楽家人生、それは同時代のワーグナーやリストと比較しても、古典的なものだったと言えるであろう。しかし私は、頑固なまでに伝統と格式を重んじ自らのスタイルを貫き通したブラームスの作品に、畏敬の念と共に独特のリリシズムを感じるのである。職人気質とも言える彼にとって、多くの友人との出会い、とりわけ彼の一生を支配し続けたとも言えるクララ・シューマンとの交流は、彼に何をもたらしたのであろうか。もしかすると、恩師の妻に理想の女性像を求めたブラームスの苦悩が、彼の心の叫びとなって、その作品形成の一端を担っているのかもしれない。しかしそれは、眩い春の陽射しではない。暮れかかった晩秋の淡い陽のごとく私の心に訴えかけてくるのである。
第1楽章 : Allegro amabile
優雅で気品に満ちた旋律が歌われるが、ピアノの和声の重厚さや三連音符を度々用いるなど、ブラームス独自の世界が展開されている。
第2楽章:Andante tranquillo
冒頭でピアノとヴァイオリンが対位法的にテーマを提示している。続いて表れるビバーチェも対位法的に描かれている。他の楽章が旋律的であるのに対し、活動的な楽章となっている。
第3楽章:Allegretto grazioso
冒頭のヴァイオリンの旋律はG線で奏され重厚さを表現しているが、それだけに高度な技法が要求される。その後リズムが複雑に組み合わされ、曲は劇的に展開していく。そして、訪れる安息の地に降り立つかのように終局を迎える。
パガニーニアーナ(ヴァイオリン独奏のための変奏曲)
Paganiniana Variations for solo violin
N.ミルシテイン Nathan Milstein(1904-1992)
19世紀初頭に活躍したイタリアのヴァイオリニスト、パガニーニはその後のヴァイオリニストのみならず、様々なジャンルの音楽家に多大な影響を与えた。少年の頃、彼の演奏に触れたリストは「自分はピアノのパガニーニになる」との思いを抱き、またシューマン、ブラームス、ラフマニノフなどの作曲家は彼の残した最も有名な旋律を元に変奏曲を書いている。本作品でもそのモチーフ(奇想曲第24番の主題)が、テーマとして使われているが、それに続き現れるのは数々のパガニーニ作品からの引用で、そこに元々の主題のハーモニーを融合させるという極めてユニークな手法が用いられている。パガニーニの出現でそのカリスマ性と彼の開発した多くの技により、その後のヴァイオリンの歴史とヴァイオリニストの在り方は大きく変革されたと言えるだろう。この作品にはそれらが凝縮されているようにも思う。まさに名ヴァイオリニスト、ミルシテインならではの作品である。
アンダルシアのロマンス Op.22-1
Romanza andaluza
P.サラサーテ Pablo Mart?n Melit?n de Sarasate y Navascu?z(1844-1909)
ヴァイオリニストであるサラサーテは甘美で純粋な音と圧倒的な技巧を駆使した曲を数多く残した。しかし、その技巧はパガニーニのそれが華々しい跳躍技巧を多く取り入れたものであるのに対し、(つまり、パガニーニ自身が柔軟で大きな手の持ち主であったためにそのような奏法が可能であった)、音色の美しさと細やかな運指を極限まで追求したものとなっている。しかも、いかなる超絶技巧曲であっても、つねに音の美しさを際立たせる作品となっている。 この「アンダルシアのロマンス」はスペイン舞曲集の第3曲で、最もスペイン的と言われているアンダルシア地方の民族歌曲の旋律を用いて作られている。伴奏が静かにリズムを刻むのに対し、ヴァイオリン・ソロが表情豊かな旋律を奏で、重音奏法など、名ヴァイオリニストサラサーテならではのフレーズをたどり、やがて冒頭の旋律を静かに回想するかのように幕を閉じる。
ハンガリー舞曲 第1番
Hungarian Dances No.1
J.ブラームス Johannes Brahms(1833-1897)
ロマの人々の香り高いダンス。民族の悲哀が描かれているように思う。しかし、そこにも「私達の言うことも聴いて」と言う人生への切なくもたくましい声が聞こえて来るようだ。元来、ブラームスの作品は内向的で情感に満ちた作品が支配的である。しかし、ブラームスは若いころからハンガリーのロマの舞曲(チャルダッシュ)にあこがれ、スケッチブックに書き留めていた。それを素材に最初はピアノ連弾曲を作曲した。これが非常に好評だったので、ヨアヒムが直ちにヴァイオリン用に編曲した。技能的に離れ業を駆使して開放的な作品への変化に成功している。ピアニストとのやり取りも面白い。
コンソレーション
Consolation
(arr. N. Milstein for violin and piano)
F.リスト Franz Liszt(1811-1886)
リスト作曲の原曲はシンプルなメロディーに終始するが、その美しいメロディーに20世紀のヴァイオリンの大家、ナタン・ミルシテイン(1903-1992)が飾りを加えて編曲した。そのメロディーを損なわないように謙虚に。余談だがこの偉大なるヴァイオリニスト、ミルシテインは1986年、82歳の時にストックホルムでの彼の最後のコンサートでこの曲を演奏した。神秘的な彼のライヴ・レコーディングを聴くと、語ることの出来ない感動が心の中を流れる。
ルーマニア民族舞曲
Romanian Folk Dances
B.バルトーク Bartók Béla Viktor János(1881-1945)
原曲はピアノのために書かれた、バルトーク34歳、1915年の作である。その後ハンガリー弦楽四重奏団の第一ヴァイオリン奏者でバルトークの友人Z.セーケイがヴァイオリンの為に編曲し、原曲よりも多く演奏されるようになった。R.シュトラウス風の管弦楽法の影響、またシェーンベルク一派の表現主義やドビッシーの印象主義等、様々な側面を持つバルトークであるが、この「ハンガリーにおけるルーマニア民族舞曲」は、コダーイと並ぶ、民族音楽収集家として卓越した業績を残したバルトークの若かりし時代の傑作である。
4つの即興曲より第3番 変ト長調 Op.90-3,D.899-3
4 Impromptus, Op. 90, D. 899: No. 3 in G-Flat Major
(arr. F. Kreisler for violin and piano)
F.P.シューベルト Franz Peter Schubert(1797-1828)
原曲は1827年ごろに書かれたピアノ曲。シューベルトの没後1857年に出版された。尚、出版時は出版社の意向によりト長調の作品として発表されている。楽曲としての構成よりも歌心にあふれた表現を求めた曲であり、歌曲王と呼ばれたシューベルトの一面をのぞかせた作品である。
華麗なるポロネーズ 第1番 ニ長調 Op.4
Polonaise brillante No.1 D major Op.4
H.ヴィエニアフスキ Henryk Wieniawski(1835-1880)
これほどヴァイオリニストにとって表現意欲をかきたてられる作品も、それ程多くはないだろう。ヴァイオリン演奏においてかなう表現手段の限りを尽くしていると言っても過言ではない。この作品から推察すると、ヴィエニアフスキは、高い技巧の持ち主であったことはもちろんだが、美しい音に対する思い入れも一際強かったように感じられる。ニ長調という調性は一般に祝祭の調と言われるが、冒頭のポロネーズのリズムにのって、華やかにヴァイオリンで歌を奏でたい。
出演者プロフィール
川畠成道プロフィール
1971年、東京生まれ。視覚障害を負った幼少期にヴァイオリンと出会い、音楽の勉強を始める。桐朋学園大学卒業後、英国王立音楽院へ留学。1997年、同院を同院史上2人目となるスペシャル・アーティスト・ステイタスの称号を授与され首席卒業。1998年、東京サントリーホールにおいて小林研一郎指揮、日本フィルハーモニー交響楽団との共演でデビュー。その後、英国と日本を拠点にソリストとして精力的な活動を展開し、毎年数多くのリサイタルと国内外の主要オーケストラと多数共演を行っている。2004年、英国にてマリア・ジョアン・ピリス、ハインリッヒ・シフ等と共にチャールズ皇太子主催のリサイタルシリーズに邦人アーティストとして唯一人招かれ、英国人ピアニストとのデュオで高い評価を得る。2005年、イタリア・ボローニャ歌劇場にて開催されたボローニャ歌劇場室内合奏団とのヴィヴァルディ「四季」の演奏は、満員の観衆が総立ちとなる喝采を受ける。2006年は、ユベール・スダーン指揮ザルツブルグ・モーツァルテウム管弦楽団の日本ツアーのソリストに起用された他、米国、中国等でリサイタルツアーを開催。2007年、スロヴェニア国立マリボール歌劇場管弦楽団との共演でヴォルフ=フェラーリ作曲「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」を日本初演、また同楽団のスロヴェニア公演でもソリストを務める。2011年には、欧州最高のオーケストラのひとつであるキエフ国立フィルハーモニー交響楽団の日本ツアーのソリストとして成功を収め、2013年にも再び共演するなど、着実な歩みを進めている。
CDは、1999年リリースのファーストアルバム「歌の翼に」(ビクターエンタテインメント)が20万枚の記録的大ヒットとなり各地で売り切れ公演が続出、大きな話題を集めて以来、2017年リリースの「マイ・フェイヴァリッツ|川畠成道」まで14枚をリリースしている。尚、デビュー10周年記念CD「ザ・ベスト」と11枚目のCD「川畠成道|クライスラーを弾く」、13枚目の「無伴奏の世界|川畠成道」は、レコード芸術誌で特選盤に選ばれている。
「徹子の部屋」、「スタジオパークからこんにちは」などのテレビ番組にも出演。エフエム世田谷「川畠成道のレディオ・ストリングス」では5年間パーソナリティーを務めた。弦楽器専門誌 「サラサーテ」における連載は、2007年より継続、好評を得ている。
デビュー当初より音楽活動の傍ら、積極的に国内外でチャリティコンサートを行う。
中学音楽鑑賞教材や高校英語・現代文教科書、高校入試問題やNHKラジオ高校講座「現代文」に映像や文章が使用される等、社会派アーティストとしても多方面に影響を与えている。
川畠成道オフィシャルサイト
http://www.kawabatanarimichi.jp
佐藤勝重プロフィール
桐朋女子高等学校音楽科(共学)を首席で卒業後渡仏。その後パリ国立高等音楽院を1等賞、パリ・エコール・ノルマル音楽院の高等演奏家課程を賞賛つき満場一致で卒業。これまでに福岡幸子、江戸弘子、G.フレミー、G.ムニエの各氏に師事。この間、全日本学生音楽コンクール全国大会優勝やSOFIA国際ピアノコンクール第1位受賞など、国内外のコンクールに入賞する傍ら数多くのコンサートに出演。また、2000年にはワルシャワで行われた第14回ショパン国際ピアノコンクールに日本代表として選抜され推薦出場を果たした。2012年にリリースされた初ソロCD「ノクチュルヌ」は、15人の作曲家によるノクターンを収録し、レコード芸術誌特選盤に選ばれ大きな反響を呼んだ。2016年にセカンドアルバム「オマージュ」をリリース。近年は室内楽にも力を入れており、日本を代表する弦、管楽器アーティストと全国各地の演奏会で共演し、これまで7枚の室内楽CDを録音している。また、音楽雑誌への執筆やセミナーでの講義、全日本学生音楽コンクールなどの審査員も務め、桐朋学園音楽大学、昭和音楽大学にて後進の指導にも力を入れている。