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曲解説〜川畠なりみち自らの言葉で〜

F.メンデルスゾーン Jakob Ludwig Felix Mendelssohn Bartholdy(1809-1847)

ピアノ三重奏曲 第1番 ニ短調 作品49

Piano Trio No.1, Op.49

F.メンデルスゾーン Jakob Ludwig Felix Mendelssohn Bartholdy(1809-1847)

第1楽章 Molto allegro e adagio
第2楽章 Andante con moto traquillo
第3楽章 Scherzo; Leggiero e vivace
第4楽章 Finale; Allegro assai appassionato

「ベートーヴェンの変ロ長調とニ長調の三重奏曲、シューベルトの変ホ長調三重奏曲が彼らの傑作であるように、これは我々の時代の大家の三重奏曲である。それは、来たるべき多くの歳月にとって我々の孫と曾孫を喜ばせるであろう非常に優れた作品である。」

この作品に対するシューマンの賞賛の言葉である。
ピアノ三重奏曲の分野においておそらく最もよく知られているであろうこの曲は、1839年メンデルスゾーン30才の時の作品で、同年秋にライプツィヒで友人のヴァイオリニスト、フェルナンド・ダヴィッドと共にメンデルスゾーン自身がピアノを受け持ち初演された。

私自身にとってメンデルスゾーンは、音楽人生において特別な位置をしめている作曲家である。98年の音楽界デビュー、99年ファーストアルバムリリース、いずれも彼の作品を演奏した。モーツァルトの作品がいかに悲しげであっても常に春のみずみずしさを讃えているのに対し、メンデルスゾーンのそれはいかなる時も晩秋のもの悲しさを感じさせる。
この曲を演奏するにあたり、彼自身が決して長くない人生の中で感じていたであろう逃れられない運命、人生のはかなさといった境地を少しでも知ることができればと願っている。

P.I.チャイコフスキー Peter Ilyich Tchaikovsky(1840-1893)

ピアノ三重奏曲 イ短調 Op.50「ある偉大な芸術家の思い出に」

Piano Trio in a minor, Op. 50

P.I.チャイコフスキー Peter Ilyich Tchaikovsky(1840-1893)

第1楽章 Pezzo elegiaco(Moderato assai - Allegro giusto)
第2楽章 Tema con variazioni - Variazioni finale e coda

この作品は、チャイコフスキーの友人で5才年長であったニコライ・ルビンシテイン(1835−81)の死を悼み、1882年に作曲された。偉大なピアニストであった友人の霊に捧げるべく、ピアノパートは全曲を通じ荘厳かつ華やかなものとなっている。元来、感傷的な性格の強いチャイコフスキーだが、この作品では友人の死にふれたことでその傾向がより一層色濃く感じられる。

そして、注目すべきは、特異な2楽章形式で作られているということ。
第1楽章は、チャイコフスキー自身友人の霊に寄り添おうとしているかのような悲歌的楽章。第2楽章は、シンプルなピアノの主題に始まり、その後11の変奏が続く。第6変奏はワルツ、第8変奏はフーガ、第10変奏はマズルカなど、様々な舞曲や音楽の形式を駆使したものとなっている。なお、第11変奏の終盤にヴァイオリンとチェロに繰り返し現れるソ♯ーファ♯ーミの音型は、ベートーヴェンがヴァイオリンソナタなどの第2楽章にしばしば用いたものである。楽聖ベートーヴェンの手法を採り入れることで、友人の魂が天に召され別の世界に昇っていく様を表していると私には思われてならない。