「音楽の友」2014年11月号(音楽之友社)に演奏会の批評が掲載されました。

川畠成道vn
「ソナタシリーズ2014」

川畠成道が委嘱した新垣隆の新作初演をメインに置いた、全曲「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」のプログラムを聴いた。祈りのような朗々としたモノローグから始まる新垣作品は、新垣の通常の語法から離れ、モーダルと調整を行き交いセンチメンタルな叙情を描出した、ネオ・ロマン風ともいえる5楽章構成の大作である。第2楽章アレグロの無窮動の激しさや第4楽章「コラール」の救いのような寛容さが、見聞きする新垣の人柄を写し出しているようで、旧友へのすばらしいプレゼントとなった。川畠は、「これからもたくさんの作品をご自身の名前で発表してください」という内容のエールを新垣に舞台上で贈るなど、ウィットに富んだトークも曲間に挟んだ和やかな演奏会。J・S・バッハの「第2番」イ短調BWV1003は、端正な演奏。良い音で、時折むせび泣くような音色が心に沁みる川畠は、イザイの「第5番」ト長調Op27-5を情熱的に好演。ほかに、J・S・バッハ「シャコンヌ」(BWV1004より)。

(9月13日・紀尾井ホール)<野平多美>

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