「音楽の友」2014年3月号(音楽之友社)に演奏会の批評が掲載されました。

川畠成道vn
精力的な活動を展開する川畠成道のデビュー15周年記念コンサート。シズオ・Z・クワハラの指揮によるキエフ国立フィルとの共演。まずはヴィヴァルディの《四季》より〈春〉〈冬〉。衒いのない運びのなかに内面から静かに迸る情感が滴るように潤いをたたえ、全体にときの移ろう雰囲気を巧みに描写していた。続いてはメンデルスゾーンの「ヴァイオリン協奏曲」。川畠の凛として澄みきった音色と相俟って自己の音楽がのびのびと響き渡る。それはケレン味のない熱演といえたが、音楽そのものの純粋な姿を自然体で描き出すというのは、演奏家として至高の有りようともいえる。それは選ばれし者だけが到達できる域、彼はその力を授かることのできた演奏家の1人といえるだろう。さらにアンコールのイザイ「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番」より第1楽章も圧巻。彼の真骨頂を垣間みた。後半のキエフ国立フィルによるドヴォルジャークの《新世界より》も手応えがあったが、自明のこととはいえ、当夜の主役は川畠であった。

(2013年12月27日・東京オペラシティ)〈高山直也〉

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